一護とルキアは、キャラクターデザインを決める段階から作者にセットで考えられている二人だと思います。


更に外見の設定だけでなく、イメージカラーや比喩・誕生日など見えない部分の対称的な設定に関しても同様のことを思います。

そんな対称的な設定が幾つもある一方、「memories in the rain」などの大きな共通点もあるので、二人で一つ・表裏一体な印象を強く受けます。


私が一護&ルキアの大きな魅力の一つだと思っている、これらの事について詳しくまとめました。



目次



一護とルキアはキャラデザインの段階から二人セットで扱われている


作者の久保先生はこれまでに、ジャンプに掲載されたインタビューやラジオ番組(BLEACH “B”ステーション)などで、一護とルキアのキャラクターができるまでの話を何度かしています。

それによると、最初にデザインが決まったルキアに合わせる形で一護のデザインを固めていったようです。



 まず、オレンジ色の髪が印象的な主人公・一護のキャラクターデザインについて久保にたずねると、意外な発言が。

 「一番初めに描いた一護は、眼鏡をかけていたんですよ。眼鏡で、黒髪(笑)。 目つきも悪くて……全然今と違う人だったんです」

 しかも、主人公の一護よりも先に、その相棒の死神・ルキアのデザインが決まっていたのだという。

 「(中略)それから、ルキアに合わせて一護のルックスを変えていった感じですね。ルキアが黒髪だから、一護は黒じゃない方がいい、とかね」

 こんなふうにほかとのバランスを考えて調整していくのは、キャラクター作りにとって大切なこと。

 「一護には、ギラッとした特徴はつけないようにしたので、今でも描くのが一番難しいんです。だいぶかっこよく描けるようにはなりましたけど。特徴のあるキャラのほうが断然描きやすいです。だからルキアはすごく描きやすいですね」

[出典:©門倉紫麻/集英社 「『週刊少年ジャンプ』40周年記念出版 マンガ脳の鍛えかた ジャンプ 人気作家37名、総計15万字激白インタビュー集」]


最も重要な主人公のキャラクターデザインにまで最も大きな影響を与えるなんて、本当に凄いことだと思います。

だから、このエピソードは本当に嬉しいです。


一護と運命的に出逢い死神能力を譲渡したことで、物語の始まりを告げたルキア。

彼女の一護に対する影響力が、連載開始前から凄くて感動します。本編でも影響力が凄いのに。

一護の外見の最大の特徴とも言えそうなオレンジ色の髪も初描きの時は全く違う黒髪だったのに、ルキアに合わせて調整していった末のデザインとの事ですから。



Q.2 キャラの描き分けで気をつけていることは何ですか?


湧き出るイメージをできるだけそのまま描くこと。そのあとで、一緒に行動させたい人と並べてカブってなければOK。カブってればちょっと調整します。

[出典:©集英社『週刊少年ジャンプ』2009年43号/漫画塾での久保先生のインタビュー]


キャラの描き分けについて、作者はこのような話もしています。

BLEACHではこの具体的なエピソードを何度も公言されている主役の一護とルキアが最たる例ではないでしょうか。


二人のデザインをカブらないように調整していった結果、描きにくさ・描きやすさの面でもカブらず対称的になったのも良いです。

そして何より、キャラクターデザインを決める時から一護とルキアがペアになっていること、一護のデザインは最初にデザインされたルキアにしか影響を受けてない感じの唯一無二なところがとても嬉しいです。



一護とルキアの対称的な設定


外見の設定からセットで考えられている一護とルキアは、キャラクターイメージの色や比喩・誕生日といった見えない部分の複数の設定までセットで考えられているように思います。

何故なら、どれも対称的になっているからです。


それが一目瞭然である2冊セットの公式ブック『SOULs.』と『VIBEs.』では、一護とルキアが表紙と巻頭歌で凄く綺麗に対比されているので、二人で一つ感が凄く強いです。



the rain drags black sun down, but the rain dried by white moon.

[出典:©久保帯人/集英社『BLEACH OFFICIAL CHARACTER BOOK SOULs.』

『BLEACH OFFICIAL ANIMATION BOOK VIBEs.』]



■表紙の英文

表紙の英文は、2冊並べると一つの文章が完成するようになっています。

もう、この仕掛けから二人で一つですね。


■イメージカラー

イメージカラーは二人とも2色設定されていて、一護は黒とオレンジでルキアは白と紫です。

「black sun」の文字色がオレンジで、「white moon」の文字色が紫で強調されていることから、これらの比喩がそれぞれ一護とルキアを表していることがよく分かります。


■巻頭歌

巻頭歌の方でも一護は「天を鎖す太陽」、ルキアは「夜を削る月」と表現され、それぞれ比喩の「太陽」と「月」が改めて印象付けられていると思います。


■表紙イラスト

表紙イラストは、背景と服装が一護は黒を基調としたものに、ルキアは白を基調としたものになっています。



表紙の英文の内容は一護とルキアの関係性を表すもので、私なりに直訳すると

「雨は黒い太陽を引きずり下ろすが、雨は白い月によって乾いた」

一護がルキアに救われた内容です。


イメージカラーと比喩の他にも、二人を語る上で欠かせない悲しい記憶の「雨」を用いて一護は救われた者・ルキアは救った者としての対比もされており、二人の唯一無二の関係性が凝縮されているデザインになってるのが本当に素敵だなと思います。


ちなみに、『SOULs.』の方に書かれている作者の直筆コメントから、表紙の絵はもちろん、これらの英文や詩(巻頭歌)を書いたのも全て久保先生だという事は確定しています。


ジャンプ初のアニメーションブックとの2冊同時発売。

2冊とも表紙描いて 2冊とも表紙の英文書いて 2冊とも詩書いて 2冊とも短篇描き下ろして チェックしてチェックして…とにかく色々やりました。

[出典:©久保帯人/集英社『BLEACH OFFICIAL CHARACTER BOOK SOULs.』]


また、2冊とも描き下ろしされた短篇でも、一護とルキアが対称的に描かれてセットになっています。

詳細は後述にあります。


それから、下記の引用は編集の方が考えた宣伝文だと思いますが、とても好きです。

この公式ブック2冊が対を成していること、一護の方が “黒” でルキアの方が “白” であること、表紙の二人が見つめ合っていることが両方の本に書かれていて、宣伝文までセット感が強いです。


キャラブックと対を成すアニメブック。

(中略)

久保帯人先生描き下ろし!白い“ルキア”カバー!!

キャラブックの“黒い”一護と対峙し、その瞳を見つめるルキア──。


アニメブック『VIBEs.』と対をなすキャラブック。

(中略)

久保帯人先生描き下ろし!黒い“一護”カバー

“純白”のルキアを射抜く“漆黒”一護のひたむきな眼差し───。見つめ合う2人。

[出典:©久保帯人/集英社『BLEACH OFFICIAL CHARACTER BOOK SOULs.』(上)

『BLEACH OFFICIAL ANIMATION BOOK VIBEs.』(下)]



もし、二人が関連性のない別々の所でそれぞれ「一護は太陽です」「ルキアは月です」と作者に示されただけなら、二人で一つな感じは薄いかもしれません。

しかし、作者の拘りが伝わってくる表紙に一護とルキアをペアで考えた設定が幾つもあるから、二人の結び付きが強く感じられて最高です。


以下、前述では触れていないものも含めた一護とルキアの複数の対称的な設定を改めてまとめました。


■比喩①/太陽 × 月

 ・black sun × white moon

 ・天を鎖す太陽 × 夜を削る月

■比喩②/the sand × the rotator

■イメージカラー/黒 × 白

■斬魄刀/漆黒 × 純白

■誕生日/7月15日 × 1月14日

■服の好みも?/細身のものが好き × フィットした服は苦手

■コンのプロフィール/嫌いなもの × 好きなもの



比喩①/太陽 × 月


『SOULs.』&『VIBEs.』より。


black sun × white moon


表紙の英文の比喩は、一護が「black sun」でルキアが「white moon」です。


ただの太陽と月ではなく、黒い太陽と白い月。

真逆な要素が2つもあることから、二人で一つな感じがとても強いと思います。



天を鎖す太陽 × 夜を削る月


巻頭歌は、一護が「天を鎖す太陽」でルキアが「夜を削る月」です。


それぞれの巻頭歌の方でも一護は「太陽」・ルキアは「月」で表現され、更にこちらも真逆な要素が複数あり、比喩が強調されていると思います。


一護の巻頭歌は「天を鎖す」との特徴的な言葉から、一護の卍解「天鎖斬月」が連想されます。

このイメージだと“天を鎖す月” の方が自然な気がしますが、敢えて“太陽”になっていることからも、「黒い太陽の一護と白い月のルキア」の設定で二人を対比させたいという作者の強い意思が感じられて凄く好きです。


ちなみに一護は、所有する斬魄刀「斬月」になぞらえ、サブタイトルやコミックスの幕間では月で表されていますが、

もし一護の比喩の基本が月だった場合、『SOULs.』で一護の比喩が敢えて黒い太陽になっているのは白い月のルキアに合わせた特別描写という事になり、尚更この作者の強い意思や拘りを感じます。



比喩②/the sand × the rotator


一護は「the sand」

運命の歯車に轢き砕かれる砂。


ルキアは「the rotator」

運命の歯車を廻す理。


『SOULs.』&『VIBEs.』に描き下ろしされた短篇も、一護とルキアが対称的に描かれセットで扱われています。

二人が出会う直前の様子がそれぞれの視点で描かれている内容で、二人のシンクロするモノローグの中にこれらの比喩が対称的に使われています。



【一護視点の短篇】

「BLEACH.0 side-A the sand」


廻転している

運命が 歯車だというのなら

俺達は その間で 轢き砕かれる砂

[出典:©久保帯人/集英社『BLEACH OFFICIAL CHARACTER BOOK SOULs.』/一護のモノローグ]



【ルキア視点の短篇】

「BLEACH.0 side-B the rotator」


廻転している

運命が 歯車だと言うのなら

我々は それを廻す理

[出典:©久保帯人/集英社『BLEACH OFFICIAL ANIMATION BOOK VIBEs.』/ルキアのモノローグ]



「俺達」「我々」と複数形なので、キャラ個人の比喩というより、一護は人間代表として・ルキアは死神代表としてのものだと思います。

しかし、これらの比喩がこうして二人セットで描かれているのは一護とルキアしかない事と、掲載されている所が既に二人が沢山セット扱いされている公式ブックである事から、これも二人の対称的な設定として挙げました。



イメージカラー/黒 × 白


イメージカラーは、一護が黒とオレンジでルキアが白と紫です。

BLEACHにとって重要性が高いと思われる黒と白のコントラストが、二人の関係性にもあって嬉しいです。


まず『BLEACH』というタイトルの由来は、

「死神をイメージさせる黒を引き立たせる為に、反対色の白を連想させる言葉にした。WHITEだとそのままなので、漂白や脱色を意味する『BLEACH』にした」との事ですし。


「ポルノグラフィティ岡野昭仁のオールナイトニッポン」の2008年12月13日放送回に久保先生がゲスト出演された時、タイトルの由来についてこんな感じの説明をしています。



斬魄刀/漆黒 × 純白


一護の漆黒の斬魄刀

■天鎖斬月(卍解)

初期~最終章の途中までのデザインは全てが漆黒の斬魄刀。

始解の大刀と違い、一般的な斬魄刀のサイズ。

柄の先に鎖が付いている。

死覇装のデザインも変化する。全身漆黒の纏う卍解。


ルキアの純白の斬魄刀

■袖白雪(始解)

尸魂界で一番美しいと言われている、全てが純白の斬魄刀。

大きさは一般的な斬魄刀サイズのまま。

柄の先にリボンが付いている。


■白霞罸(卍解)

始解の形状のまま、刀身が透明になる。

死覇装のデザインも髪色も純白に変化する。全身純白の纏う卍解。



一護とルキアの斬魄刀のデザインもペアで考えられていると思う理由


刀のサイズや形状・変化する死覇装のデザインに類似性がある一方で、色が漆黒と純白の正反対になっているからです。

『SOULs.』と『VIBEs.』のように明らかに一護とルキアの二人セットで考えられた対比要素が既に複数ある事を前提に見ると、斬魄刀についても偶然ではないと思います。


また、「サキよみ ジャンBANG!」での「斬魄刀とキャラクターの組み合わせはどうやって決めているんですか?」という質問への久保先生の回答によると、キャラと斬魄刀の組み合わせはほぼ同時期に決めていて、別々に考えて組み合わせたことはないようなので。


つまり、一護のキャラクターデザインをルキアに合わせて考えて決めていった経緯があるなら、同様に斬魄刀のデザインも二人ペアで考えられたのではないかと思います。



斬魄刀は頭の中にキャラが出てきた時に一緒に出てくるか

逆に斬魄刀が先に出てきてそれに引っ張られるようにキャラが出てくるようなものなので

別々に考えて組み合わせたってことはないですね

出来上がったものを見ると

キャラの内面とか精神性をうつしたような刀が多いように感じます

[出典:©テレビ東京・電通「サキよみ ジャンBANG!」(2012/2/17放送回)]



最終章の新形態も絵になる二人


正直、最終章の途中で一護の斬魄刀のデザインが大きく変わった(卍解も大刀になった等)ことに少し戸惑っていましたが、後に「全巻一冊」という電子書籍の久保先生描き下ろしカバーを飾る最終章の新形態の一護とルキアを見たら、どの段階でも素晴らしく絵になる二人な事をすごく実感できたので、とても救われました。


キャラデザインの段階から二人合わせて考えられた貫禄の凄さを感じます。

こういうのをずっと見たかったし、待ってました。とても美しいです。


二人セットで統一された構図、黒と白の対比、煌めく特殊印刷仕様、文字色が一護側はオレンジでルキア側は紫。

…といったように、上で散々触れている2冊セットの公式ブックの対表紙を彷彿とさせる一護とルキアがカバーの表裏を飾っているから、文字通り表裏一体になってて感動です。




誕生日/7月15日 × 1月14日


一護は7月15日生まれで、ルキアは1月14日生まれです。

誕生日が丁度きれいに半年違いで対称的になっています。


繰り返しになりますが『SOULs.』と『VIBEs.』のように明らかに一護とルキアの二人セットで考えられた対比要素が既に複数ある事と、

一護と深い繋がりのある両親の一心(12月10日生まれ)と真咲(6月9日生まれ)の誕生日も丁度半年違いになっている事から、

偶然ではなく意図的な設定だと思いますし、壮大な運命を感じます。



その他


一護とルキアがペアになってる設定は、これまで書いたものだけで充分嬉しいんですが、他にも加わるとしたら…



服の好みも?/細身のものが好き × フィットした服は苦手


トップスもボトムスも細身のものが好き。

[出典:©久保帯人『BLEACH』1巻/一護のプロフィール]


フィットした服は苦手。

[出典:©久保帯人『BLEACH』1巻/ルキアのプロフィール]


これはBLEACH1巻に収録されている二人のプロフィールに書かれている設定です。


細身の服が好きな一護と、フィットした服は苦手なルキア。

服の好みの設定も真逆になってると思いますが、これも二人のセット扱いの一環なのでしょうか。



コンのプロフィール/嫌いなもの × 好きなもの


好きなもの:ルキア姐さん

      キャラメル

      巨乳


きらいなもの:一護

       アスパラガス

       たまねぎ

[出典:©久保帯人『BLEACH』4巻/コンのプロフィール]


少し論点からズレるかもしれませんが、4巻に収録されているコンのプロフィールで、一護とルキアがさり気にセット扱いされて対称的になっているのも好きです。

コンの好きなもの・嫌いなものの欄の一行目に、二人だけ名指しされて載っています。



一護とルキアの主な共通点


一護とルキアの間には対称的な設定がある一方で、大きな共通点もあります。


■memories in the rain

■命懸けで護り合っている

■世界を変えてくれた大切な人

■高校の男女別出席番号が「6」


memories in the rain


まず、なんと言ってもこれ。

次に挙げる二人特有の共通点が複数ある悲しい雨の記憶、「memories in the rain」です。


■雨の日に大切な人を目の前で亡くした過去がある。


■“自分が殺してしまった”とその死に責任を感じ、罪悪感と後悔と深い悲しみを抱えてずっと苦しんでいる。


■このエピソードが描かれている回のサブタイトルは「memories in the rain」

ルキアの方は“2”が付いている。


 ・一護→“memories in the rain”(3巻収録)

 ・ルキア→“memories in the rain2”(16巻収録)


■後に、その死に関連する敵が再び目の前に現れ戦闘になる。その敵は亡き大切な人の姿を装ってくる。




一護の「memories in the rain」
6月17日、雨の日。

一護の最愛の母・真咲が、当時9歳だった一護を護って残忍な虚・グランドフィッシャーに殺されてから、ずっと一護は母の死に責任を感じて苦悩している。


グランドフィッシャーは人間の姿をした疑似餌を頭からぶら下げていて、これが見えるほどの霊的濃度の高い人間を喰らうことで力を蓄えてきた。

一護はこの疑似餌に掛かってしまい、それを庇った真咲が死亡した。


その6年後の真咲の命日に、一護は墓参り先で母の仇と再び対峙し戦った。

その際、グランドフィッシャーは疑似餌を真咲の姿に変化させ一護の動揺を誘ってきた。


激闘の末にグランドフィッシャーは逃走し、その後一護と再戦することなく、一心が一撃で倒した。

(ちなみに、作者が脚本チェック済みの実写映画では、一護がグランドフィッシャーを倒している。)



ルキアの「memories in the rain」

ルキアの上司だった元十三番隊副隊長の海燕がメタスタシアという虚に霊体ごと融合された際、向かって来た海燕をやむを得ずルキアが刺し殺した。

この時、ルキアの心情を表すかのように雨が降り注いでいた。


海燕は明るく気さくで面倒見がよく、四大貴族の朽木家の養子として周囲から浮いていたルキアにも凡庸に接していたため、ルキアも慕っていた。

また、海燕は死の間際に自我を取り戻した時にもルキアを気遣い、謝罪と感謝の言葉を遺した。

それにより、仕方ない状況だったとはいえ、ルキアの悲しみと罪悪感と後悔はより一層深いものとなっている。


後に、海燕の霊体と融合したメタスタシアを取り込んだ十刃のアーロニーロが、虚夜宮に侵入したルキアの前に海燕の姿で現れた。

当時の海燕の面影でルキアを惑わすも、嘘を見抜いて激昂したルキアと本格的な戦闘になり、ルキアに倒された。



グランドフィッシャー戦は、次のようにルキアの「memories in the rain」と重なる部分が多い構成にもなっているので、二人のエピソードの類似性が更に高まっている気がします。

初期の一護とルキアの絆を急速に強めた大切なエピソードでもあると思います。


■戦闘の舞台が森林。

■雨が降っている。

■一護と海燕は似ている。

■「誇りを守る為の戦い」として、大切な人を殺した敵と一人で戦いたい一護(海燕)に、ルキアは加勢したくても出来なかった。(かつて浮竹に止められたのを思い出す描写もある)



命懸けで護り合っている


次に、命懸けで護り合っていること。


1話で運命的に出逢った直後から、ルキアは体を張って虚から一護を護ります。

そして、ルキアに死神能力を譲渡された一護は家族とルキアを護るため、重傷のルキアの代わりにその虚と戦います。


1話から命懸けの事態に一緒に直面している運命共同体のような二人ですが、命懸けで護り合っているのが顕著なシーンは56話「broken coda」や尸魂界篇のシーンだと思います。



56. broken coda


護りたい、でも護れない

痛感する己が無力…


人間への死神能力の譲渡──。尸魂界の重罪を犯したルキアを捕らえるべく、現世へ降り立った朽木白哉と阿散井恋次。圧倒的な力の二人に、一護は毅然と立ち向かうが…!?

[出典:©久保帯人/集英社『BLEACH 03(集英社ジャンプリミックス)』あらすじ]



人間への死神能力の譲渡という重罪を犯したルキアを捕らえる為に現世へやって来た白哉と恋次。

追っ手が来ることを予見していたルキアは一護とコンの身に危険が及ばないよう書き置きを残して姿を消しますが、ルキアの身に危険が迫っているのを察知した一護はルキアを追いかけます。

そして、ルキアを護るために一護は追っ手と命懸けで戦いますが、白哉との圧倒的な力の差に太刀打ちできません。


斬魄刀を折られ、斬り倒され満身創痍の状態でも尚、白哉に立ち向かおうとする一護。

ルキアはそんな一護を護りたいが故に一護を怒鳴り付け突き放す演技をし、重罪人(極囚)として自ら尸魂界へ連行されていきます。

そして、ルキアの涙から真意に気付き一人残された一護は雨の中、『どうしてだ 俺は また護られた────…!』と自分の無力に絶望し嘆きます。



尸魂界篇


…助けるなとか帰れとか… ゴチャゴチャうるせーんだよテメーは

言ったろ テメーの意見は全部却下だってよ

二度目だな …今度こそだ

助けに来たぜ ルキア

[出典:©久保帯人『BLEACH』18巻151話/一護の台詞]


自身に処刑が迫る身にも関わらず、救出に来てくれた一護を護るため、助けを拒み現世へ帰らせようとするルキア。

そして、そんなルキアの意見は全部却下でルキアを護ろうとする一護。

橋の上でも双極の丘でもそう。「broken coda」を含めたこれらのシーンは、一護の方はもちろん、ルキアが一護を護る時の言動がもう本当に切なくて尊くて最高に好きです。


一護へ向ける厳しい言動は全て一護を護りたいが為。助けを求めることは一切なく、この態度は一貫してブレない。

でも、一護の心配ばかりして、一護を想って隠しきれない涙が滲んでしまうルキアが凄く健気なので、読むたびに二人の関係性が更に好きになります。


普段涙を見せないキャラがここぞという時に涙を見せるシーンは堪らないです。

ギャグシーンを除いて、普段は滅多に泣かないルキアが涙を見せた貴重なシーンは海燕関連や白哉関連の時などにありますが、次のように一護関連の時に多めなのも良いなと思います。


■一護を護って尸魂界へ連行される時(7巻56話)


■尸魂界の橋の上で一護と再会した時(14巻116話)


■処刑直前(18巻150話)

※ルキアは『ありがとう』と感謝を述べながら他の仲間たちも思い浮かべているが、最後に一番大きいコマで一護を思い浮かべた後に「さよなら」と言い涙を流した。


■処刑から一護に救われた直後(18巻151話)



世界を変えてくれた大切な人


…ただの仲間じゃないよ

黒崎くんにとって 朽木さんは大切な人


…だって

朽木さんは黒崎くんの────

世界を変えた人だから

[出典:©久保帯人『BLEACH』19巻164話/織姫の台詞]


ルキアを処刑から救った後も死神たちの“ルキアを処刑する”という気構えそのものを粉々に砕く為に白哉と命懸けで戦っている一護について「ただの仲間の為に…そこまでして戦うか!?」と問う荒巻に、織姫が一護の心を代弁した台詞です。


このシーンがある回のサブタイトルが「That Who Change the World」(世界を変えた人)なので、一護のルキアへの心情が重要なものとして際立ってるのも良いです。


一護の本心については、

俺はルキアに命を救われた

俺はルキアに運命を変えて貰った

ルキアに出会って死神になったから… 俺は今こうして皆を護って戦える

というルキアへの感謝の想いが155話で恋次を通して語られています。


一方、ルキアについて。

一護のおかげで白哉や恋次たちとの関係が改善でき、ずっと逃げていた海燕の遺族と向き合い和解することが出来たから、ルキアが何十年も孤独と苦悩を抱えて生きていた世界を、颯爽と現れた一護が変えてくれたんだと思います。

一護はルキアの命を護っただけでなく、ルキアがルキアらしく居られる世界に変えてルキアの心も護ったんだと思います。


(オリジナルですが、アニメBLEACH 5th Anniversary BOXのドラマCD「ルキア」では、

黒崎一護。この人間との出会いが、私の人生を変えた。一護は、私が一護の人生を変えたと言う。しかし、私も一護と出会ったことで私の人生は変わったのだ

というルキアの台詞があります。)




護り護られ大切に想い合っている一護とルキアが、決して一方通行ではなく、こういう唯一無二の激重感情をお互いに抱き合ってるところが本当に尊くて大好きです。


それは、94話の一護とルキアの言葉からも確実に伝わってきます。


二月ほどしか行動を共にしなかったが

不思議と心から信じられる奴だった

それなのに 自分のせいで運命をねじ曲げ ひどく傷つけてしまった

何をしても償いきれぬ…

そう言って 最後はいつも悲しそうな顔をしていました

[出典:©久保帯人『BLEACH』11巻94話/花太郎の台詞]


…バカ野郎…

そんなもん… 全部 俺のセリフじゃねーか…! 

────絶対 死なせやしねえからな……ルキア!

[出典:©久保帯人『BLEACH』11巻94話/一護の台詞]


花太郎から聞かされたルキアの本心を「全部 俺のセリフ」と言い切る一護がめちゃくちゃ良いんですよ。

出逢って間もない頃から不思議と芽生えた心からの信頼も、深い罪悪感も全部。


それに加え、自分の世界を変えてくれた大切な人同士。

尸魂界篇の締めの181話「AND THE RAIN LEFT OFF」(そして、雨は止みゆく)回で、救われた側のルキアの「…ありがとう 一護」に対して、救った側の一護が 『こっちのセリフだ。ありがとう ルキア。お陰で やっと雨は 止みそうだ』と返すやり取りも。

一方通行じゃないところが凄く好きです。


「全部 俺のセリフじゃねーか…!」

『こっちのセリフだ』

率直な反応から、相手と同じくらいの想いなのが率直に伝わってくるのが素敵だなと思います。


一護やルキアにとって悲しみの象徴として重要な “雨” が、二人が関わり合ったことで “止みゆく” 事は、相当凄いことではないかと。

作者がFade to Blackのムービーガイドで公言されたように、「一護とルキアの関係が特別」になるのも分かります。


そんな一護とルキアの、同じくらい大切に想い合ってる激重な感情が一つじゃない事がまた最高です。唯一無二。



高校の男女別出席番号が「6」


一護は高校一年生の時の男子出席番号が

「6」。

ルキアも同じく、女子出席番号が「6」です。


この流れで「主な」共通点になるのかは分かりませんが、一応…。共通しているのは事実なので。

これも意図的なんでしょうか。


一緒に日直してたのかな?と考えるととても可愛いので、私はとても好きな設定です。



一護とルキアをセット扱いしてる作者発言


最後に、作者が一護とルキアをセットで語っている発言を幾つか。

嬉しいことに、インタビュー等で作者が一護とルキアについて言及していることは何気に多いので、引用させていただくのは一部です。


■不動の人気の一護とルキア

■一護とルキアで男女セット

■ルキアは一護にとって一筋の光

■一護とルキアは特別な関係

■最終巻の一護とルキア


不動の人気の一護とルキア


尸魂界側の死神勢の登場で大変動のあった上位陣。にも関わらず一護とルキアの人気だけは不動で、作者としては嬉しい限りです。

[出典:©久保帯人『BLEACH』13巻]


13巻に収録されている第二回キャラクター人気投票結果についての作者コメントです。

第一回と同じく一護は1位、ルキアは2位でした。本当に嬉しい限りです。


久保先生が一護とルキアに言及されてる時は、二人に関する質問への回答の場合も多いですが、このコメントのように、そうではない場合ももちろんあるから一際嬉しくなります。



一護とルキアで男女セット


一護とルキアで男子女子でセットもいいですね。RT @akemi8py_kanaya: @tite_kubo @1953tink @aiba_ns やったー!先生のお墨付き!せっかくならコンちゃんパンツとセットにしたいなぁ! >一護パンツ

[出典:久保帯人先生の初代Twitter@tite_kubo/2010年6月24日のツイート]


これはまだTwitterに引用リツイート機能が無かった時の作者のツイートです。

久保先生のコメントは一番上の「一護とルキアで男子女子でセットもいいですね。」です。


このとても嬉しい発言に至った経緯は、TwitterでBLEACHのアニメスタッフさんたちが販売してほしいBLEACHグッズ(パンツ)の話で盛り上がっていたところに久保先生も話に加わり同調されたことで、喜んだアニメスタッフさんの一人が「せっかくなら一護とコンのパンツをセットにしたい」と希望したのを受けて、更に久保先生が好意的な反応を返した、というものです。


キャラ同士の結び付きが強いのはもちろん、BLEACHの男キャラ一番手は一護で女キャラ一番手はルキアなので、男女セットにするならこの二人で決まりだと思います。

作者のお墨付きだから、是非とも発売してほしいです。



参考記事



ルキアは一護にとって一筋の光


Kubo-sensei:Later on, I learned that the word "rukia" means "light." She's like a ray of light for Ichigo, which makes the name really suit her.

[2008年アメリカ・サンディエゴ、Shonen Jumpのインタビューより引用]


これは2008年にアメリカでShonen Jumpのインタビューを受けた時の久保先生の発言です。


「後に、“ルキア”という言葉が“光”を意味することを知りました。彼女は一護にとって一筋の光のような存在なので、この名前は本当に彼女にふさわしいです」 

和訳すると、こんな感じかと。


ルキアの名前の由来を質問された時のものですが、この部分は特に聞かれたわけではなく、久保先生自ら追加情報を教えてくださった時に一護の話も絡めてくれたので、尚更嬉しいです。


「ルキアは一護にとって一筋の光のような存在」なのは公式。


本当に嬉しすぎます。



一護とルキアは特別な関係


今回のストーリーで一護とルキアの関係が特別なことなんだ、と再認識させられたのも驚きでした。

[出典:©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ ©劇場版BLEACH製作委員会2008 『劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ MOVIE GUIDE』久保先生のコメント]


原点回帰がテーマで一護とルキアの強い絆がクローズアップされたBLEACH映画第三弾『Fade to Black 君の名を呼ぶ』のインタビューでは特に一護とルキアの関係に関する作者発言が多いですが、その中でも私はこれが一番好きです。


作者は一護とルキアの関係をずっと特別だと思ってたけど、この映画でそれを再認識されたとのことで。

この発言が飛び出すほど琴線に触れるものがあったと思うと感激です。


好きなペアの二人が「特別な関係」って、本当に嬉しすぎます。

特別=他とはっきり区別して扱うこと・格別、なので。



最終巻の一護とルキア


元々この二人から始まった物語なので、この二人で締めようと思いました。

(中略)ルキアと一護は最後に一緒でいいかなと。ずっと一人だったので、ラストだけ二人にすることで特別感も出るのかなって。

この二人が『BLEACH』を象徴する二人ですからね。一護だけでも『BLEACH』は始まらなかったし、ルキアだけでも始まらなかったんです。

[出典:©久保帯人/集英社『BLEACH イラスト集 JET』]


通常はBLEACHのコミックスの表紙になるキャラは一人ですが、どんな想いで最終巻(74巻)の表紙だけ一護とルキアの二人を描かれたのかについての質問に、久保先生がめちゃくちゃ嬉しい内容の回答を『JET』でしてくださいました。

この文章、最初から最後までめちゃくちゃ嬉しくて、時間が経つほど喜びが増してます。


全文嬉しいけど、「特別感」「この二人が『BLEACH』を象徴する二人」という言葉が特に嬉しすぎます。


更に、15年間の連載に関する作者の感謝の言葉が綴られている最終巻の巻頭コメントでは、一護とルキアがBLEACHキャラ代表で名前を書かれているのも嬉しすぎます。

さすが、『BLEACH』を象徴する二人。



最高の15年間の感謝を

一護と

ルキアと

全てのBLEACHの登場人物達と

ここを読んでいる

全ての人へ。

[出典:©久保帯人『BLEACH』74巻/久保先生の巻頭コメント]



まとめ


【一護とルキアのキャラクターデザインについて】

作者は、先にデザインが出来たルキアに合わせて一護のデザインを固めていった。


【一護とルキアの対称的な設定】

■比喩①/太陽 × 月

 ・black sun × white moon

 ・天を鎖す太陽 × 夜を削る月

■比喩②/the sand × the rotator

■イメージカラー/黒 × 白

■斬魄刀/漆黒 × 純白

■誕生日/7月15日 × 1月14日

■服の好みも?/細身のものが好き × フィットした服は苦手

■コンのプロフィール/嫌いなもの × 好きなもの


【一護とルキアの主な共通点】

■memories in the rain

■命懸けで護り合っている

■世界を変えてくれた大切な人

■高校の男女別出席番号が「6」


【一護とルキアをセット扱いしてる作者発言】

■不動の人気の一護とルキア

■一護とルキアで男女セット

■ルキアは一護にとって一筋の光

■一護とルキアは特別な関係

■最終巻の一護とルキア



キャラクターデザインの段階からセットで考えられている一護とルキアは、その外見の設定だけでなく、対称的なキャラクターイメージの色や比喩や誕生日などの複数の設定もセットで考えられていると思います。

キャラの成り立ちを考えたら、そうなるのは自然な流れかもしれません。


そして、そんな対称的な設定が幾つもある一方で「memories in the rain」などの大きな共通設定があるから、まさに二人で一つ・表裏一体な印象が強くてとても好きです。

一護&ルキアの大きな魅力の一つだと、改めて感じます。


元々、本編にて強い絆で結ばれている二人ですが、これらの背景を合わせて考えると一護とルキアの唯一無二の絆・関係性が更に強固で特別なものに見えます。





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以下、イチルキアンチへの毒です。


久保先生がファンクラブのQ&Aで“一護の「対」は恋次だけ”と公言してから(※詳細な意味や意図は不明)、イチルキアンチが喜んでたのを見かけたが、本当に何も分かってなくて浅はかだと思ってます。


個人的にはピンポイントで「対」だけに拘ってるわけではなく、一護とルキアの特別感とか二人セット感に多大なる喜びを感じてるんですが、このイメージは何も変わらないからです。

明らかに対称的になってる複数の設定が二人の間にある事は、特別感の一環なんでしょうね。


そして、一護とルキアの間には「memories in the rain」等の本筋に関わるような大きな共通設定もあり、対称的な一方で根幹は似ています。

対称的な部分も、似ている部分も強い。相反する似た者同士だから、キャラクターとしての完全な「対」のイメージとはまた別という事かなとも思います。


この関係性をどう表現すればいいのかと思ったけど、上手く表現できないのが正に一護とルキアの醍醐味でした。


この記事で書いたような、一護とルキアが作者にセットで扱われている要素が多数ある事実、特別感や二人で一つな感じが強い事実は絶対に潰せません。



【追記】

前述の「※詳細な意味や意図は不明」という注釈を取り上げ「『一護の対はルキアしか嫌』と主張している」と、曲解して叩いてきた相変わらず何も分かってないイチルキアンチを見かけたので、ちょっと補足しておきます。

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■「黒と白」「太陽と月」

→これ自体は客観的に見ても「対」なのは事実


■「黒と白」「太陽と月」等の対比描写

→一護&ルキアに公式で複数あるのは事実(当然久保先生が考えたもの)


「一護&ルキアは対の設定・描写が公式で複数あるのに、キャラが対ではない」ようなので、(これはどういう考え方なんだろう?)と素朴な疑問が湧き「※詳細な意味や意図は不明」と書きました。

自分の解釈は前述していますが、作者の回答に詳細は書かれていなかったので。


でも、次のことから、別に一護の対はルキアしか嫌だと思っているわけではないし、そんな主張は一度もしていません。


■ピンポイントで「対」だけに拘ってるわけではなく、一護とルキアの特別感とか二人セット感に多大なる喜びを感じてて、このイメージは何も変わらないから


■二人セットで特別感溢れる燃料が一護とルキアには本当に沢山あるので、「対」そのもの(キャラとして対か否か)に拘る必要が無いから


■『SOULs.』&『VIBEs.』等の明らかな対比描写が複数あるのにキャラは対ではない、との事から、「これらの対比描写も一護とルキアの特別感・二人セット感の一環だった」事に気付けたから


↑むしろこっちの方が断然嬉しい気持ちすらあります。

対比描写が複数あることについて、元々キャラが対だった場合「当然のこと」になるが、キャラが対でなかった場合「特別なこと」になるから。